第39回(平成29年度)奨励賞受賞者(平成29年10月28日授与)

第39回(平成29年度)奨励賞受賞者(平成29年10月28日授与)

第39回(平成29年度)奨励賞受賞者(平成29年10月28日授与)

氏名 所属機関・職名
(受賞対象論文執筆時)
受賞論文
神田惟 東京大学大学院人文社会系研究科、日本学術振興会特別研究員 “Revisiting the So-called Ghaybī Workshop: Toward a History of Burjī Mamlūk Ceramics,” Orient 52 (2017)
法貴遊 京都大学大学院文学研究科 “Logic in Compound Drugs according to Medieval Arabic Medical Books and the Cairo Genizah,” Orient 52 (2017)

授賞理由

氏名 授賞理由
神田惟  15世紀マムルーク期カイロで活動したと目される「Ghaybī工房」による陶器生産の歴史的諸相を考察するこの論文は、自ら構築したデータベースを慎重かつ分析的に用いて、当該工房の変遷・発展の諸相を、制作技法・彩画モチーフ・彩画様式といった陶器の美術史学的分析と陶器に記された文字の銘文学的分析の双方に基づいて考察する。陶製品生産の背後にある徒弟制度の歴史的展開を推定し、陶工銘の意味する人名の異同について新しい理解に到達するなど、複数の興味深い結論を提示しており、著者の優れた研究能力を示している。
法貴遊  本論文は、中世イスラーム世界の眼病治療に関し、従来の研究において考察されてきた医学書のみならず、カイロ・ゲニザ文書にみる実践的な投薬事例とその論理に注目して、複合薬の処方の原理を考察する意欲的研究である。先行研究は、アラビア医学の実践的側面を強調し、古典理論からの乖離を指摘する向きもあるが、本論文は、ゲニザ文書の緻密な分析により、その処方には熱・冷・乾・湿の四性質を基盤とする一貫したロジックが用いられていると主張する。文献学的に新しい資料を開拓しつつ行う研究は、今後のさらなる発展への期待も大きく、高く評価される。
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