会長挨拶
このたび、一般社団法人日本オリエント学会の会長に就任いたしました。
本学会は、初代会長となられた三笠宮崇仁親王殿下をはじめとする先達のご努力により1954(昭和29)年6月30日に創設され、1963年に社団法人、2013年に一般社団法人となり、今年で70周年を迎えました。これも一重に本学会の活動に対する皆様方のご理解とご支援の賜物と厚く御礼申し上げます。
本学会は、古代オリエント研究を起点としつつ、同地域に展開したイスラーム社会の歴史や文化、さらには現代中東の民族や国家にかかわる専門家を擁する学会です。研究分野はメソポタミア・エジプト・イラン等に成立した古代文明から、ユダヤ教・キリスト教・イスラームなどの宗教、多様な民族や言語からなる社会を含み、学術領域としては考古学、人類学、歴史学、宗教学、言語学、文学、美術史などに及びます。このように、一定の地域に焦点化しつつも手法や分野の異なる研究者が集うことにより、この地域を地政学的観点のみから問題とするのではなく、人類文明の揺籃の地として、また異なる民族や文化が出会い、倦むことなく対話を重ねてきた舞台として、オリエントを多角的に捉えることができるのではないでしょうか。私どもはオリエントの歴史や文化にかかわる研究者として、オリエント文明の豊かさ奥深さを明らかにするとともに、同地域の平和と安定に貢献することを念願します。
今日の社会・経済的状況で、本学会のような地道な活動をおこなう団体を運営するには様々な困難があります。とくに、会員の多くが所属する大学においては、研究環境がますます厳しくなってきているように思います。こうした状況に応じ、より効率的な組織に生まれ変わるべく、今期の理事会では事務局の体制、理事の職務内容、各種委員会の在り方について大胆な見直しを行っております。つきましては、会員の皆様には一層のご理解とご協力をお願いするとともに、私ども理事会に対する忌憚のないご意見、ご提言をお待しております。
2024(令和6)年7月吉日
小林春夫