第7回三笠宮オリエント学術賞授賞について
会長 近藤 二郎
日本オリエント学会では、本学会の創立者のおひとりで、日本におけるオリエント研究の推進者であられる三笠宮崇仁殿下の名を冠した「三笠宮オリエント学術賞」を設け、日本におけるオリエント研究の発展に大きな学術的貢献をなすと判断される業績を顕彰し、もって研究者の育成に資することとしています。
厳正なる審査の結果、下記会員に第7回三笠宮オリエント学術賞を授賞することを決定いたしましたので、ご報告申し上げます。
受賞者 | 月本 昭男 (古代オリエント博物館館長、立教大学名誉教授、上智大学名誉教授) |
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受賞業績 | (1)月本昭男著『古代メソポタミアの神話と儀礼』岩波書店、2010年 (2)月本昭男訳・注解『ギルガメシュ叙事詩』岩波書店、1996年 (3)月本昭男訳・注解『バビロニア創世叙事詩 エヌマ・エリシュ』ぷねうま舎、2022年 その他、多数。 |
選考経過 | 当学会では、会員や関連学会に対し学会ウェブサイト、学会メーリングリストその他を通じて2022年11月1日より被推薦者の募集を行った。その結果、募集締切りの2023年1月20日までに2件の業績が推薦された。 理事会が選任した選考委員会は、各業績の内容とその推薦理由を子細に検討したうえで、全委員で意見交換を行い、月本昭男氏を第7回三笠宮オリエント学術賞の受賞候補者として理事会に推薦することとした。 理事会は、2023年3月28日に開催された第580回の会合において、選考委員会からの推挙を全会一致で承認し、月本昭男氏に第7回三笠宮オリエント学術賞を授与することを決定した。 |
授賞理由 | 月本昭男氏は、上述の業績(1)において、メソポタミアの神話、儀礼、文学、預言等に係わる12の論考を集めて一冊の書として編んでいる。集められた論考は、合わせてメソポタミア宗教文学文書の種々のジャンルを広く扱っており、我が国で書かれたもっとも体系的な古代メソポタミア宗教文化の研究書となっている。これと並行して月本氏は、アッカド語で書かれた宗教文書・文学文書の代表的作品である「ギルガメシュ叙事詩」と「エヌマ・エリシュ」の原典訳・注釈(業績(2)、(3))を出版している。これらは、最新の学術成果を忠実に反映した高レベルの学術業績であり、(1)と合わせて、我が国の古代メソポタミア研究の学史に残る事業といえる。加えて、月本氏は、1980年代の半ばから、故平山郁夫画伯の個人コレクションに含まれる未公刊の多岐にわたる楔形文字粘土板文書を研究し、前2千年紀後半から前1千年紀前半の契約文書、行政文書、書簡、卜占文書、医術文書、王碑文など70点以上を欧文の学術雑誌に公刊してきた。これは、我が国における楔形文字アッカド語文書研究の先駆的事業であり、国際学会にも大きなインパクトを与えている。 また、上述した楔形文字文書研究分野以外で、月本氏は旧約聖書学と聖書考古学の分野においても、我が国の学術研究の牽引役を務めてきたことも付言する。 |
授賞式 | 日時: 2023年6月10日(土) 午後1時より 会場: 東京都千代田区神田駿河台1丁目1番地 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー3階 1032教室 |