第1回三笠宮オリエント学術賞授賞について
会長 鎌田 繁
本オリエント学会では、本学会の創立者のおひとりで、日本におけるオリエント研究の推進者であられる三笠宮崇仁殿下の名を冠した「三笠宮オリエント学術賞」を創設いたしました。
厳正なる審査の結果、下記会員に第1回三笠宮オリエント学術賞を授賞することを決定いたしましたので、ご報告申し上げます。
受賞者 | 大村幸弘会員 (中近東文化センター・アナトリア考古学研究所所長) |
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受賞業績 | 長年にわたるカマン・カレホユック遺跡の考古学発掘調査並びにその定期的調査報告書Anatolian Archaeological Studies:KAMAN KALEHÖYÜK, Vols. 9-16 (2000-2007)の刊行 |
選考経過 | 2010年2月9日の第499回理事会において決定された日本オリエント学会三笠宮オリエント学術賞については、学会ホームページその他を通じて、その第1回候補者募集を2010年8月より行った。その結果、募集締め切りの2011年1月末までに10名の研究者がその業績とともに推薦された(内、2名による外国語の業績)。 日本オリエント学会に設けられた選考委員会において、推薦理由が紹介されるとともに、過去5年間に公刊された業績という理事会の申し合わせに基づき、各業績につき、慎重な審査を重ね、最終的に、大村幸弘氏を三笠宮オリエント学術賞の第1回授賞者として理事会に推薦することに決定した。 |
授賞理由 | 1985年より、(財)中近東文化センターによる中央アナトリアの古代遺跡カマン・カレホユックの発掘調査において主導的な役割を果たしてきた大村幸弘氏は、自らが編集責任を負う定期刊行物『カマン・カレホユック』(1992年発刊、2000年以降はAnatolian Archaeological Studies:KAMAN KALEHÖYÜK、中近東文化センター)に発掘調査の成果および豊富な学術データを精力的に発表し、アナトリア考古学の学術的諸問題に取り組んでこられた。その業績は国際的にもきわめて高い評価を受けている。 わけても氏の諸論考は、カマン・カレホユックの文化編年を緻密にあとづけることによって、この遺跡をアナトリア考古学(ひいては西アジア考古学)の文化編年を探る標準遺跡のひとつへと押し上げたのである。カマン・カレホユック遺跡の発掘調査で得られた文化編年の構築の問題だけでなく、発掘調査の過程で明らかにされてきた様々なアナトリア考古学上の事象に対しても多くの新知見を提示している。そうした意味で氏の学術活動は、一遺跡の発掘調査というに留まらず、日本における西アジア考古学の最も重要な国際的な学術貢献の一つであるといってよい。 加えて、氏の現地調査を通して育てられた日本およびトルコの次世代の考古学者は少なくない。また、2010年7月には、カマン・カレホユック遺跡の近くにカマン・カレホユック考古学博物館が開館した。これらは、大村幸弘氏がこれまで、学術研究のみならず、学術上の国際交流さらには学術研究の社会貢献という面でも多大な功績を残してきたことを物語るものである。 日本オリエント学会は、大村幸弘氏のこれらの業績を高く評価し、第1回三笠宮オリエント学術賞を授与する。 |
授賞式 | 日時: 平成22年5月21日(土)午後1時より 会場: 東京都千代田区神田錦町1丁目9番地 東京天理教館9階 天理ホール 授賞式後、受賞者による公開講演「カマン・カレホユック発掘調査の25年」があります。 |