第38回(平成28年度)奨励賞受賞者(平成28年11月12日授与)
氏名 | 所属機関・職名 (受賞対象論文執筆時) |
受賞論文 |
---|---|---|
大塚修 | 東京大学大学院人文科学系研究科助教 | 「イルハーン朝末期地方政権におけるペルシア語文芸活動の隆盛:ハザーラスプ朝君主ヌスラト・アッディーンの治世を事例として」『オリエント』58/1(2015) |
授賞理由
氏名 | 授賞理由 |
---|---|
大塚修 | 大塚氏の論文は、イルハーン朝支配下のイランを舞台とし、イラン系の出自を主張する一地方君主による文芸庇護を主題とする。当該君主の狙いは自らを「正当なイラン系のムスリム君主」と表象させることにあったと解釈する大塚氏は、イラン系地方政権によるこうした庇護が、イルハーン朝中央による庇護と並んで、同時代のペルシア語文芸の全般的な隆盛に貢献したと論じる。一般に、イルハーン朝期は、「イランのくに」という政治的領域概念がモンゴル系支配者のもとで復活した逆説的な時代と理解されている。イラン系地方君主によるペルシア語文芸の庇護を、そのイラン意識と関連づけながら論じる当論文には、このような通説的な理解への挑戦に繋がるより大きな議論の芽が見てとれる。大塚氏の議論は手稿本を含む一次史料の堅実な分析にもとづいており、論旨も明快である。今後の研究のさらなる発展を期待し、ここにオリエント学会奨励賞を授与する。 |